全国通訳案内士、旅程管理主任者。
ドイツ語・英語のガイド国家資格と英検1級・独検1級を所有。

バイオリン&教育ママ人生の思い出と生涯学習による終活日記。

お能、長唄三味線、バイオリン、ピアノ、河川水路・史跡巡り、ウォーキング、ハイキングなどを楽しみたい♪

2006年10月01日

アメリカのVファミリー

忘れたくないことがありすぎて困ります。それだけ良い思い出が多いということなので喜ぶべきですが、今回取り上げる件では嫌なこともありました。でも最終的には成功だったので記録しておきたいと思います。アメリカコネチカット州のVファミリーと旅した1週間です。

富士五合目に行く日、五合目を見て箱根に戻る予定だったのに、突如V氏が山頂に上ると言います。6月末で山開きまであと数日とは言うものの、まだ正式には開かれていません。危険が伴います。一方、家族は五合目を見たら箱根に戻ると言います。まず車の問題があります。一旦五合目まで送り届けた後で家族を箱根に連れ帰って、再び夕方五合目まで迎えに行かなくてはならないからです。

2回も往復する費用は予算に含まれていません。誰がこの費用を負担するかという点、また公に開かれていない山に登って事故があった場合にどうするかという点、この二つを説明して諦めてもらおうとしましたが、この旅行のハイライトはご主人の富士登山であって、その点はすべて事前にリクエスト済みだと奥さんが言い張ります。果ては、「富士山は開かれていようがいまいが、そこにあるのであって、法律に違反するわけでもないし、あなたに指図されることはない!」と奥さん。

自分一人では判断できないので、旅行会社と相談して、費用については後日話し合う点と、事故の場合には責任は本人にある点を納得させて、とりあえず登ってもらうことにしました。夕方、再び五合目までご主人を迎えにいきます。予定通り夕方5時半に戻ってきたお父さんは、運転手さんと私の顔を見るなり、膝から下がふらふらときて、車の中になだれ込みました。富士登山の大変さをとことん味わいながらも強気で頂上を制覇して、孤独と戦いながらたった一人降りてきました。

稲取の寿司屋で
翌日は伊豆半島の旅です。どうしても海岸で寿司が食べたいというので、ガイドブックで見つけた稲取海岸の魚八に案内します。新鮮なネタで味も良く、とても喜んでもらえたので私の株も上がりました。金目鯛の目を食べようと挑戦する長女の姿が、ほほえましい一コマとなりました。

また、いわゆる「off the beaten track」と呼ばれる、観光客があまり出入りしないところを望んでいた家族なので、伊豆のひなびた漁村や山村で降りたのが気に入ってもらえました。

あさば能舞台

その夜の宿泊は修善寺温泉の老舗あさばです。昔、雑誌や本で写真を見て、ひそかに憧れていた野外の能舞台のある旅館です。Vファミリーのおかげでこの舞台を実際に見ることができて感激しました。あいにくお能の上演はありませんでしたが、本当に素敵な旅館です。いつかお能があるときに泊まりたい旅館です。もちろんお能は薪能です。




あさばの薪能
昔買った本に載っている、薪の火がゆらめく中に浮かび上がるあさばの能舞台は幻想的で、まるで600年も昔にタイムスリップしたみたいです。



伊豆の後、高山に行きました。飛騨の山々や川を越えてたどりついた小京都。ここでも、着くなり大問題に直面しました。部屋が気に入らないから部屋を変えるか別のホテルを探してほしいと言うのです。高山一の高級老舗旅館。これ以上のところは見つかりません。でも、箱根の強羅花壇や修善寺温泉のあさばと比べてしまい、自分達が泊まる部屋ではないと言います。もっとランクの高い部屋を見ると気に入りましたが、料金が高くなります。箱根や修善寺と同じ料金を払っているのだから、差額は一切払わないと主張します。これには私も困り果て、旅行会社と旅館と家族の3者間の板ばさみとなり、携帯電話の電池がなくなるほど電話しました。ようやく1時間以上たってから、お金の件は帰国後の課題として先延ばしすることになり、とりあえずランクの高い部屋へ移ってもらいました。

曲げわっぱ弁当箱そんなこんなのすったもんだの連続でしたが、高山で曲げわっぱ弁当箱を見て「素敵!」と言った私の姿を見ていたご主人、早速それを購入していました。お別れのときにくださったプレゼントの包みの中に、そのお弁当箱を見つけたときには感激しました。包みの中には、他に私の息子のためにとニューヨーク・ヤンキーズの帽子も入っていました。

「富士山から無事降りてきたときに早速箱根まで電話で知らせてくれたのが本当に嬉しかった。実は内心本当に心配してたの。」と奥さんが初めて本音をもらしてくれて、ようやく私の苦労も報われました。そして、「これで好きなものを買ってね」と渡された心付の入った封筒には、こんなメッセージが同封されていました。 Miko-san, Thank you for making sure all the details were in place. You made this a very special visit.
Thank you very much. The V. Family
  

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2006年08月16日

養老町の室原文楽4

養老町とドイツのバット・ゾーデン市との交流は20年に及ぶ歴史を持ち、1年おきに交流団が互いの町を訪問し合っています。文化交流グループの他に、同時期スポーツ少年団も来日していましたが、私は文化グループ付きで、文化・スポーツ合同の行事の日には両方を担当しました。

連日、朝から晩まで盛りだくさんの素晴らしいプログラムが用意されていて、忙しいことこの上なかったのですが、実はちゃっかり私も一緒に楽しんでしまいました!中でも、最も感動したことのひとつに室原文楽鑑賞があります。

もともと文楽(人形浄瑠璃)が大好きなので、大阪の国立文楽劇場が東京にやってくると、若い頃はチケットを買ってよく見に行ったものです。室原文楽は養老の地に長く受け継がれている伝統芸能で、人形の大きさが大阪の文楽と比べるとはるかに小さく、操り方も違うのですが、歴史を感じさせる古い人形を使っていて、小さいながらもその表情はなかなかすご味があります。

室原文楽1

今回の演目は、近松門左衛門の「絵本太閤記」。といっても、主人公は明智光秀と、信長への謀反を恥じる光秀の母、そして光秀の息子などです。人形の巧みな動きと、太夫の熱のこもった語り、義太夫三味線の力強い音、この3つの要素が見事にからみ合って、観客の心をとらえて離さず、息を呑むような興奮の中、幕を閉じました。




室原文楽2

このような伝統芸能を保存していくのは大変に骨のおれることで、地元では後継者問題に悩んでいるとのことでした。ドイツの文化交流グループの5名も、日本の一地方に伝わるこの素晴らしい文化を心ゆくまで堪能したようで、終演後も、なかなかその場を立ち去ろうとせず、人形や三味線を眺めたり、太夫に質問したりしていました。
  
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